おごそかにたもたざらめや神代より うけつぎ来たるうらやすの国
国民のうへやすかれとおもふのみ わが世にたえぬ思なりけり
これらの御製を拝することによっても、いかに明治天皇さまが、万世一系の天子としての御自覚をもって、多難な時局に対処し近代国家の建設に邁進あそばされたか、そして明けても暮れても国民の上に御心をおそそぎになったかを、うかがい知ることができます。
よもの海みなはらからと思ふ世に など波風のたちさわぐらむ
ひさかたの空はへだてもなかりけり つちなる国はさかひあれども
の御製によっても拝察する事ができます。まさに世界連邦を思わせるような神さながらの尊い御嘆きと申すべきでありましょう。
明治天皇さまの御生涯をつうじての御信条は「誠の心」であられたことは、御在世中の御逸事がこれを物語っています。一例をあげれば、ロシアのニコライ皇太子を傷害した大津事件も、天皇さまの果断な誠意あふれる御行動によって解決されたと申しても過言ではありません。
鬼神もなかするものは世の中の 人のこころのまことなりけり
めにみえぬ神の心に通ふこそ 人の心のまことなりけれ
とお詠みになり、誠の心こそ、神の御心にも通じるものと仰せられています。 世に「先憂後楽」という言葉がありますが、明治天皇さまの御生涯はまさにこの一語につきるといえましょう。
今般朝政一新の時に膺(あた)り 天下億兆一人も其処を得ざる時は、 皆朕が罪なれば、今日の事、朕自ら 骨身を労し心志を苦しめ 艱難の先に立云々
と仰せられております。日清・日露戦の時、出征の兵士と苦労を共にするとの思召(おぼしめ)しから炎暑の最中でも冬の軍服をお召しになったという御逸話も広く知られています。 また現在の明治神宮御苑が、天皇さまの皇后さまに対する優しいお心づかいによって設けられ、天皇さま御自ら設計のお指図までされたのにもかかわらず、政務のお忙しさの余り、完成後もついに一度もお出ましがありませんでした。
こがねゐの里ちかけれどこの春も 人伝にきく花ざかりかな
年年におもひやれども山水を 汲みて遊ばむ夏なかりけり
の御製を拝するとき、今日の時勢と思い較べて、誠に恐れ多い次第です。