近年、雀の声で目を覚ますことがなくなった。ひぐらしの声もめったに聞かない。秋が更けても鵙の鋭い啼き声を耳にしなくなって久しい。虫の音さえめったに耳に止まることはない。深夜、コオロギの声に心動かされることもなくなった。都会に生活していると、一日一日、自然から遠ざかって行くような気がしてならない。
このごろでは一戸建ての家もマンションも、遮音性を厳重にしてピタリと窓や戸を閉めてしまうから、隙間風が通わなくなったと同時に、これらの声も耳遠くなってしまったのであろうか。
そんなことはない。実際にこうした自然の声が、もう響いてこなくなってしまったのだ。そのかわりに、電子機器の人工音が私たちのまわりを不断に流れている。いまや生活のスタイルがまったく変わって、日本人の暮らしの中にあったさまざまな情景が、いつの間にか失われてしまった。
(後略)
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