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寄稿「私と武道」

 今般、至誠館のコラム「私と武道」に投稿する機会をいただき、私たち2人とも大変光栄に思っております。2人は武道の錬成経験を共有しながら、お互いの意見をしばしば交換してきました。そのような経緯もあり、このエッセイを一緒に書くことにしました。私たちにとって重要と思われることについて、対話形式で皆様にお伝えしたいと思います。

ラーマン:
私が合気道を始めた「動機」は、日本の文化財としての武道、そして肉体と精神を統合する上での実践的なアプローチとしての武道に興味を覚えたというところにあります。しかしながら、合気道の複雑さゆえに、動機というものをひとつに落とし込むことがだんだんと不可能のように思えてきました。稽古を続けていくうちに、武道を続ける動機というものがますます複雑になってきたのです。

ヨナス:
私にとっては、その複雑さが武道の魅力なのです。当初想像もしなかったことですが、例えば袈裟斬のような動きひとつを取ってみても、一つの動きの中に多くのことを発見することが出来ます。そのひとつの動きの中からさらに多くの事を発見する。そのためだけに何度もある一つの動作を繰り返し稽古する。そのようなことにすばらしさを発見するなどとは当初は考えてもいませんでした。

ラーマン:
反復稽古についてですが、その中に「武道」の奥深い意味を発見しました。それは「終わりの無い道」ということです。この点に学習過程に対するドイツと日本の根本的な相違点が如実に表れているとも言えます。ドイツにおいては「目標達成指向」の教育をされてきました。ドイツでの武道の稽古は、テクニックを学ぶことに重点が置かれ、昇段審査の準備に向けてより重点がおかれていました。一方、至誠館に於いては「過程指向」の稽古を経験したといえます。精進していくことそのものがより重要であると思えてきました。

ヨナス:
そのことには、私も同意します。武道が示してくれたのは、ゴールではなく「真実の道」としての「道」でした。私は「過程としての道」を経験したい一心で、ハイキング、サイクリング、マラソンといったようなことを今までやってきましたが、それらのことは過程が長かったとしても最終地点があります。そして、一旦ゴールに到達すると、所詮それでおしまいとなってしまうのです。しかし、武道では「終わりなき道」に本当の美を見るのだということを至誠館で学びました。

ラーマン:
至誠館で理解するようになったのは、「問題意識」を養うということのような気がします。自ら精進する中で重要なのは「己の敵に向い合う」、つまりそれによって応ずることが出来る準備、心構えができているということなのです。日常生活に還元すれば「時」(タイミング)を知る、つまり何かがおこるまで待つのではなく、自ら立つ、行動を起こすということが大切なのです。

ヨナス:
同感です。反応することではなく、自ら行動することが、これまで私が「武道」を修練する上で重要であったし、また現在でもそれに変わりありません。この面からして「言葉なしで学習する」という経験は私にとって貴重なことです。最初に至誠館で稽古を始めた頃は、日本語能力に限界があったため、先生方が言葉で教えられていることを理解できませんでした。そこでふと気づいたのは、日本人の初心者の方々は言葉は理解しているにもかかわらず、私たちと同じ間違いをしていることでした。そして、稽古を理解していく上で別の方法を探求し始めました。それは先生方の体の動きを良く見るということでした。今では、理解し修練する上で、これはとても重要なことと思っています。そう、静かに観察して、真似をするということです。言葉を通して理解するという一般的あるいは慣習的な方法論が使えなかったために、代わりとなる方法を自発的に探求したということになります(しかしもちろん日本語も勉強していますよ)。

ラーマン:
同感です。武道家の動きをよく観察し、それぞれの動きの中で重要となってくる本質的な一つひとつの点を探し出していくことは理解の助けになります。このことは先生方の動きにかかわらず、他の門人の方々の動きを取っても、レベルにかかわらず同じことが言えます。体格、柔軟性、および反応という観点から他の人と比較をしていくことで、自分の身体の反応をより深く理解していくということが出来てくると思います。この観点から多くの方たちと稽古できることは大変役に立っていると思います。この面に於いてもうひとつ思いあたる重要なことは、「肚(はら)」の理解です。他の道場でも先生方が肚の意味と重要性について語られていますが、多かれ少なかれ抽象的な方法に帰着されている点に気づきました。それらの先生方の話からは実際にその概念を理解することはとても出来ませんでした。ここ至誠館において「肚」は「肚」そのもの自体とは異なる「四股」のような基礎的な稽古を通して体験しながら初めて認識することができました。

上記の他にも皆様に申し上げる点、また議論する側面は多々ありますが、私たちにとっての武道とは主に「行うこと」であるといえます。そこで稽古に出かける前に、もうひとつ皆様と共有したいことがあります。ドイツの諺(ことわざ)に"Uebung macht den Meister"という言葉があります。これは武道に於ける重要な点をまさについていると思われます。その意味は「稽古が達人を作り出す」ということです。そして、これがまさに私たちがこれからも可能な限りずっと続けていきたいことなのです。


マリールイーゼ・ヨナス(Marieluise Jonas)
ドイツ南西部ラインラント=プファルツ州Ludwigshafen (ルートヴィヒスハーフェン)出身。平成13年にAikido Verein Hannoverで合気道を始める。平成16年より日本留学(現在、東京大学大学院工学系研究科・社会基盤学専攻・景観研究室博士課程在籍)、研究のかたわら合気道と古流武術の錬成に励んでいる。合気道初段。

 
ハイケ・ラーマン(Heike Rahmann)
ドイツ北西部ニーダザクセン州のNorden 出身。ヨナス門人と同じく平成13年Aikido Verein Hannover入門。平成16年より東京大学工学部建築学科・大学院工学系研究科建築学専攻博士課程に留学、研究活動と武道修練に専念している。合気道初段。

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