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寄稿「私と武道」
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「静」の中で最大限の力を発揮する「動」
 昨年12月、昇段審査に当たって『武道所見』を書くことになり、それに際して私が合気道から学んだこと、得たことについて考えた。

 私は、稽古前と稽古中にある少しの静寂の時間が好きである。姿勢を正し、目を閉じて大きく深呼吸すると、ざわついた心はたちまち静まり返る。明治神宮の森の凛とした空気、道場を通り抜ける風を体に感じながら我を省みる、私にとって貴重な時間となっている。

 毎日、部活動や勉強で忙(せわ)しなく過ぎる時の中、この時間だけは自分をしっかりと見つめることができる。思い返せば6歳の時から10年間、毎週1、2回必ずこの行為をしてきた。幼い頃はただただ暇な時間でしかなかったが、この数分間の積み重ねは確実に私を成長させてくれた。人は、自分を見つめ直すこと、自分と向き合うことをしないと次に進めないと思う。合気道でも同じだ。教えてもらうだけでは上達しない。何度も練習して自分のできない技を知ることが第一歩だ。未熟な点が分かったならば、それを次から直していくことで初めて内容の濃い稽古ができる。このように自分を知ることは何事においても初めの一歩なのである。この、我を省みることの大切さを知ることができたことが、私が合気道から得たことのひとつである。また、幼い頃からの稽古で我を省みる習慣がついていることを幸運に思う。

 私が思う合気道の最大の魅力は、「静」と「動」を持ち合わせていることである。合気道は他の武道とは違い、相手から力を加えられることが前提にあって初めて成り立つものだ。

 そして相手から力を加えられたのならば、その力を利用して最小限の力でそれを封じる。そのスマートさにすごく魅力を感じる。稽古の前には心を落ち着ける静寂があり、技の途中も体の中心である腰は浮かず、力は腹から呼吸に導かれて出てくる。このような徹底された「静」があって初めて「動」が生まれる。このように「静」の中において最大限の力を発揮する「動」というものが、先程述べたスマートさを生み出すのではないか。このことに魅力を感じ出したのはごく最近であるが、これに気付いたことにより、私の中で合気道がさらに奥深い存在となった。平静な心身は、先程述べた、我を省みることにも繋がり、私を成長させてくれている。

日本の国民であることを誇りに、両親に感謝を忘れずに
 武道の魅力はなんと言っても心が鍛えられるということにあると思う。エアコンの存在が当たり前である世の中で、そのようなものがない道場で、真夏でも真冬でも窓を開け、同じ道着を着て稽古に臨むのはかなり辛いものがある。何年通ってもこれに関しては体が慣れることはない。だが年数を重ねて変わったこともある。それは、どんなに暑くてもどんなに寒くても、それを乗り越えて稽古をこなすことに魅力を感じている私がいることだ。ものの考え方や気持ちの持ちよう、つまり人格は合気道の影響で確実に良い方向に変化していることを感じる。合気道は私の性格にも大きく影響を与えているのだ。このことに関してもうひとつ例を挙げたい。私は小学生の頃は合気道以外の習いごとが多く、中学生の頃は学校の部活動が忙しかったためあまり稽古に出ることができなかった。その中で上達するには一回一回の稽古に真剣に取り組み、効率良くスキルを上げるしかなかった。そのような環境の中で私は、例えそれがすぐに大きな成果が上がらなくても、堅実な努力を惜しまないことを学んだ。そしてそれが自分を裏切らないこと、そして何より楽しいのだということも知った。合気道は様々な面で人の心を強くするものである。

 合気道自体だけでなく、それを明治神宮の境内ですることで得たこともある。至誠館では、大きな自然に囲まれ、それを全身に感じながらの稽古となる。夏には青々としげり強い生命力を感じる木々、冬には凛と澄みきって冷たい空気を感じることができる。このように我が国ならではの四季を身近に感じることができるのだ。初めて明治神宮の道場で深呼吸をしてから11年、あの心洗われるような空気は今も変わらない。それに黒帯を着けている緊張感が加わった近頃はさらにしゃきっとした気持ちで稽古に臨むことができている。幼い頃からこのような本当に恵まれている環境の中にいれたことをとても幸せに思う。

 武道所見を書くにあたり、至誠館の方から明治天皇がお書きになった教育勅語の冊子をいただいた。それを読むと、私が今挙げてきた合気道から学んだことと同じようなことが書かれていた。つまり、私が合気道から得たものは、明治天皇が国民に学んで欲しかったことであると言える。今まで文化の伝承など意識したことが無かったが、日本が古くから持っている道義道徳を自分がちゃんと学ぶことができていることが分かりとても嬉しかった。日本という国の国民であることを実感して、それを誇りに思うことができたのは初めてである。それも全てこの恵まれた環境があったからである。至誠館の方々、師範の方々、友人、そして両親に感謝の気持ちを忘れずにいたい。そしてこれからも合気道を続けて、多くのことを得ていきたいと思う。


平成24年8月18日

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