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寄稿「私と武道」

 フランスはヨーロッパの中でも柔道・合気道・剣道等、武道人口の多い国と聞いている。文化、芸術面においても古き良き物を大切に愛し、新しき物を受け入れ融合させてゆく独自の文化社会を築く国民性と知る。

 武道に関心を持たれるのは日本の脈々とした歴史による武士道精神の深さと洗練された武術の鍛錬法と技術によるものと思う。

 このたびの「霊性の息吹」と題して行った講習は世界的に不穏な時代にいかに武道を役立てるか、既存の武道修練を越えて精神を深め、肉体的鍛錬を具体的、かつ体系的に学ぶ機会となった。

 講習会では9・11同時多発テロの実例をもって、国家社会の防衛につき動揺しない心の修養の必要性、それに伴う肉体の鍛錬法を解かれる中、宮本武蔵の言う「巖(いわお)の身」の解説講義がなされた。その解釈は武道で錬磨した精神と肉体を現す最高表現の言葉であると思う。それゆえ理解の深さは各人それぞれと思うが、武道を志す者にとって武蔵はインパクトのある人物なのでその言葉は神秘的であり深く心に響き印象づけられた。更には呼吸法によって臍下丹田(せいかたんでん)の位置と重要性が精神と肉体に認識させられた講義だった。

 実際、稽古に入っても「腹」という地盤が意識されているので動きも下腹の大切さと気持ちの持ち様が整理されていて進めやすかった。剣術組太刀は基本太刀はじめ裏太刀、相心組太刀と配られたプリントと照らしながら、実技で一本一本の理合と細部に亘る説明がなされ視覚と思考に強く印象に残った。

 館長は受講者60名全員の袈裟斬と基本太刀を一対一で受けを取り、個々のレベルを判断して次の段階へと進ませた。基本太刀、裏太刀、更に相心組太刀へと進める者が半数はいた。その受けを取る者は数人である。順番待ちの人達が列を成す。私自身は充分に受けを取り切れなかったことが悔やまれる。技の要所要所を的確に示し、各自が修得した技に自信を持たさねばならない。受け側の自信のゆらぎと迷いは進行の妨げになる。至誠館での稽古のようにゆったりとした流れの中、時間が十分にあると思うのは考え違いで、そのたびごとに確実に理解し憶えて行くことが肝要とあらためて思った。

 講習会の中盤に講演会と演武会が企画されていた。稲葉館長の講演は「霊性の息吹」と題して、神道と武道その精神思想、それを現代社会に役立てるには――と語られ英語とフランス語で通訳された。二階にいる受講者は椅子席だったが、やはり内容によっては座って拝聴した方がより腹に入る気がした。

 奉納演武は各国の指導者が行ったが、講習三日目ということもあり腹がすわった気合が入り良かった。中でも暫く至誠館で稽古をしてこられたノルウェーのオルセンさん六段は柔らかさの中に力強さを秘めた体捌きで目をひきつけるものがあった。意外に思ったのは男性への受けの中に女性が混ざっていたこと(日本の演武ではあまり見かけない)。如何に男女同権とはいえ屈強な男性に投げられているのは違和感を覚えた。しかし今の世の中、女性が男性に危害を加える事件は頻発している。男性も如何に女性に対して油断無く身を守るかという術も必要かと思った。見ればドイツのアニタさん四段の演武は男性に劣らず力強く凛々しい動きと迫力があった。

 講習の幕開け、道場の上座に祀った神棚への明治神宮神職による祝詞奏上とお祓い、中盤の演武・講演前の清祓式と武道奉納奉告祭、講習の締めの神事、そのたびごとに道場の我々の心を一つにして行く。神道と武道の関連と精神は講義により理解でき心に浸透したと思う。それは稽古のたびごとの受講者の鎮まった拝礼の静けさによって伝わってきた。

 この6日間、剣術を中心とした心・技・体の解説とその実技に絞られたことは、指導する側にとっても受ける側にとっても共に集中し精神的にも肉体的にも達成感を持つことができた。そして、武道精神思想の講義によりヨーロッパ人の根底に流れる騎士道魂を呼び覚まし、武道修練の重要性に気付かせたことは更に一段階進んだ講習会となったと思う。

 海外講習会は回を重ねるたびにその内容は密度が濃くなってゆく。それゆえ準備及び現地での調整を余念無くされる関係者に敬意と感謝を表したい。その誠意と熱意は参加者全員に伝わって充実感あふれる講習となった。

 講習会を終えて思うことは、フランスの歴史の中に流れる本物を知り大切にするフランス人気質は日本人の歴史を重んじ伝えてゆく気質と似たところもあること。ほんの短い期間で限られた範囲ではあったがヴェルサイユ宮殿やパリ市内の建造物・美術に触れ豊かな気持ちをいただいた。

 ヴェルサイユ市長主催のカクテルパーティー、講習会主催者の一員アリスさん宅でのガーデンパーティー、そして夜にはヴェルサイユの町に出て食事をし、ワインを頂く機会も度々。各国参加者と武道談議、お国自慢をして、寝食を共にしたことは忘れがたく、それらを企画準備して下さった全ての方々に感謝しております。


おかだ・あさこ=昭和54年至誠館入門。合気道と古流武術に励み現在武道研修科講師(合気道六段)。平成10年、剣道科にも入門(剣道四段)長年精進を重ねた禅書・絵画ともども文武両道探求の士。

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