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コラム「大和心」

危難に処する心得

 このコラムで掲げる“魂を練る武道”というのは、敵のあらゆる攻撃を想定しながら、自らの精神(魂)と肉体を練り上げて行くという考え方である。その意味で、3月11日の東日本大震災は、広義の武道で考えれば、その影響は日本全土におよび、自然の脅威という激震を受けて、1億3千万人の日本人の魂が試練にさらされるといってもよいだろう。その結果、わが民族の魂は、いかなるものになるのか。

 否、その脅威は、未だ終わったとはいえない。小休止の状態なのかも知れない。11日の翌日には、長野県北部でマグニチュード(M)6.7が、15日には静岡県東部でM6.4の地震が起きており、各地で余震がなお頻発している。次に懸念されるのが首都直下地震で、いつ起きてもおかしくないと警鐘をならす専門家もいる。

 次の災害にいかに備え、国家体制をいかに整えるのかが、日本の緊急かつ最大の課題となっていて、大きな不安を抱いていることは、4月の統一地方選、特に東京都の石原都知事の4選の結果をみても明らかにみてとれる。

 菅民主党政権には、国家の危機意識が稀薄で、民心の掌握力が欠如しているが、その解決策を辿っていけば、現憲法の“欠陥”が明らかになってくる。いまの国家体制そのものに、こうした国家的非常事態に対処する規定がない。従って危機対応に障害がある状態にある。それは以前から指摘されていて識者の間では、「緊急事態基本法」の制定を急ぐべきだとの声があがっていた。

 ここには国家・国民にとって、それぞれの危機対策についての法制定と心得について二人の専門家の提言を紹介しておきたい。

 一人は、元陸上自衛隊北部方面総監の志方俊之氏の緊急事態基本法の制定のすすめだ。

 我が国には「国家が国民を守る」という基本がない。民主党だけが悪いわけではない。自民党政権時代からの「危ないことは考えないでおこう」という事なかれ主義のツケだ。緊急事態基本法の制定は急務だ。ただ、同法は国民の私権制限にもつながるため、憲法問題もかかわってくる。与野党を超えた憲法論議を期待したい。(『読売新聞』4月6日)

 これは国民の心得がどうあるべきかとのレベルの問題でなく、国家体制の基本に、緊急事態のあり方を規定し、災害発生などに備えるべきという、国家として当然に規定しておくべき法制定の必要を指摘している。時間を要するが、こうした憲法の欠陥をしっかりと認識した上で手遅れにならぬよう改正すべきは言うまでもない。

 次に国民の側の危機に対応する心得について。これは現代武道の修養の内容にも関わっている。本来武道は、己および集団に襲ってくる攻撃、危害に対して、どう対処して、わが意志(精神)を貫くかに、修練の目的がある。だから“想定外”は言い訳でしかない。スポーツ競技のようなルールもないのだが、現在の道場内での教室武道は、想定外は行わない、ルール内で行うという傾向がつよくなって、不意の用に役立たなくなってしまっている。これをいかに打破するかは、本来の姿に戻り、不断に修養工夫していくことが必要だ。

 失敗をテーマにした学会があるらしい。その理事長の畑村洋太郎氏が、原発の事故について、次のように指摘していたのは興味深い。

 災害の対策を立てるときは守る側で考えるのではなく、攻める側に立って考えなくてはならない。どこをどう攻撃したら福島第1原発の機能を奪えるのか。自分が地震や津波、山火事になって考えなくてはならない。そうするとすきだらけなのがよく分かってくる。(『産経新聞』4月20日)

 こちらの最も弱いところを狙ってくるのが敵だ。日本国の敵を想定しないというのが現憲法の欠陥の第一にあげられる。敵の立場に立って、見て、聞いて、考えて対処法を工夫するのが武道修練の根本であることは変わらない。厳しい敵のいる武道の役割の重さがいよいよ心にしみてくる。(い)


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