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コラム「大和心」
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 昨秋以来、武道場至誠館で練成している古流の鹿島の剣太刀を、平明に3つの段階にわけて修練することで神々への祈りを根底とする日本武道の概要を説明できればとの願いで映像化に取り組んできたが、2月12日の茨城・鹿島神宮神域での撮影で予定された三巻までの全収録を終えた(武術雑誌 月刊『秘伝』3月号に関連記事)。

 記紀によれば、神武天皇の建国創業における鹿島神宮の御祭神・武甕槌神(タケミカヅチノカミ)の武威発顕の状は、赫々(かくかく)たるものとして描かれている。折から明治神宮の大前に“鹿島の秘太刀”の修練成就と武道の教化育成の祈願をこめて準備をすすめてきたが、総仕上げともいえる鹿島の大神への奉納の日が、紀元祭の翌日となったことは意義深いことである。

 「一人の敵」から「万人の敵」へ――。いかなる目標をもって武道の修練をめざすかは各々異なるが、いずれにしても精神修養の最適の日和ということができる。戦国末期のように、天の時、地の利、人の工夫の三者の一致を“一の太刀”の具現化ととらえるならば、現代は、まさに形は変わるにせよ「鹿島の太刀」再現の天機ととらえても過言ではない。

 今回の奉納で改めて心に銘じたことは、神域内の武道場の意義と、聖俗を分ける境界に位置する鳥居の中の鎮守の森の神々しさの役割である。神社は、御祭神の御神威を輝かせることは言うまでもないが、武道に限定すれば、道場は、修行者の武威を張る修練場であるし、鎮守の森はその武威を益々発揚して輝かせる場所といえるだろう。だからこそ鹿島香取などの武神に往時の武将たちが戦勝を祈願し、武芸の剣豪、達人が神人一如の境を求めて修行した。それは現代も変わりはないのだが、神々と武道の距離が離れて見えなくなっている。これを元に戻すことが緊要だ。

 11日、明治神宮の紀元祭に参列して、神武建国の意義をかみしめ、戦後のわが国の国情を思いながら特別稽古をすませたあと、スタッフ9人で翌12日早朝に鹿島神宮へ。正式参拝ののち、武徳殿で奥伝編の撮影を仕上げたほか、奥宮神前での奉納演武。あわせて地に鎮まった要石を拝観して、鹿島灘での祓の太刀修行となった。この一連の神道修養は、鹿島の太刀の神妙へと歩をすすめ得た感があった。

 奥宮は、御祭神の荒魂(あらみたま)が祀られている。荒魂とは、御祭神の外面に現れた荒々しい戦闘的な作用をさしていうが、社殿は慶長10年(1605年)徳川家康が奉納したもので、重厚さと力強さがあり、社殿前は武的精神を集中し演武するには格好の広さとなっている。

 気力を充実させて、真剣での祓の太刀、そして真剣立合を奉納させていただいたが、前もって要石の重石を意識したこともあり、抜刀術での重心が下腹丹田に沈んで安定感が増し、剣尖の走りが鋭くなった感があった。

 奉納では、術技の精妙さを駆使するというより、心身の力の限りを尽くし、自ずと体と技が練磨されてくるのを待つというのがこれまでの姿勢。さらに神道的武道必勝の教えに基づき、“いつ”(勇気はげしくして、ものこれにあたりがたきいきほひ)と“いづ”(その勇気をもって我を守る)の力を体することを心がけた――。奉納は、撮影のため三度繰り返されたが、疲労感は残らずさわやかであった。“至誠通神”との状態か――。祓いの威力をさらに体得しえた感があった。

 快晴、厳寒の中に、心身の充実感を得て、次に場所を鹿島の海岸に移した。47年前(昭和40年12月)NHKテレビで「日本の伝統」と題して國井善彌先生ほか他流の武道家を映像化(モノクロ)したことがあった。この時私が同行し、受けをとった。神前での真剣を使った鍔競(つばぜり)の技のあと、鹿島灘に出た。一隻の漁船が砂浜にあり、わびしい風情があったが、その横で、お一人での真剣の祓の太刀が披瀝され、意気軒昂であった。

 カメラはそれをズームアップ。海辺の波音が、真剣の舞に重なり、印象深いシーンとなった。

 初伝、中伝、奥伝の修練と積み重ねてきて、鹿島の神前に奉納。最後に國井先生が神々に祈りを捧げられたように、鹿島の海辺で“祓の太刀”を修行する姿を映せればという思いであった。

 あの時の美しい海辺は残っているか。私にその実力が備わったか。

 彼岸の先生はいかに評価されるだろうか。

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 漁船は一隻もなく、当時の風情とは違った。しかし海と浜辺はあの時よりも美しく見えた。快晴に恵まれ、まぶしいほどの日差し、大気が澄んで、心が洗われ、生命の喜びがこみ上げて、心が躍った。

 大海原を前に、「一の太刀」から「祓の太刀」へ。

 まさに自然の神々への奉納というべきか。

 大海の呼吸と一体となった生命の躍動、そこに祓の太刀の源泉をみた。

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