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【平成26年】

秋号

『代々木』は、明治神宮・明治神宮崇敬会が発行する季刊誌です。

我が国の美しい伝統精神を未来に伝えるため、昭和35年より刊行をつづけております。

明治神宮崇敬会の皆様にお送りしております。

 

[明治神宮崇敬会のお申込み]

近代歴代皇后のご養蚕――皇室ご養蚕がもたらしたもの
近代歴代皇后のご養蚕――皇室ご養蚕がもたらしたもの

富岡製糸場行啓

こうした現在の皇室ご養蚕は、近年、新たな大きな意義を見出した。その契機は、平成7年度からの正倉院宝物の古代染織裂(ぎれ)の復元事業である。古代染織品の織物の風合いにこだわったこの復元事業は、通常に手に入る外国種との交雑種による太い糸では叶わず、古くから国内で飼育されていた国産種の繭の糸が必要であった。それが小石丸だったのである。しかし小石丸を生産している農家はごく僅か。そこに皇后陛下がお育てと知り、正倉院事務所が御下賜を願い出た。それを受けられた皇后陛下は、生産量を大きく増やしての作業を主任らと共に行われて、小石丸を正倉院事務所に送られたのである。その結果、?(あしぎぬ)、羅(ら)、綾、錦の織物等、20点余が完成した。この事業によって、古代裂の織成や染色技術の研究が進み、実際にその織物が完成していることの意義は大きい。また貞明皇后以来の小石丸が、破棄の危機を皇后陛下のご英断によって防がれ、百年以上に及んでこの種を継承されたことの意義も大きい。

 

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太田 彩(宮内庁三の丸尚蔵館学芸室主任研究官)

皇后陛下のご養蚕――紅葉山御養蚕所・藤枝貴和主任に聴く
皇后陛下のご養蚕――紅葉山御養蚕所・藤枝貴和主任に聴く

――藤枝主任は平成16年まで群馬県蚕業試験場長でいらしたのですよね。群馬の富岡製糸場が世界遺産になりましたが、明治6年に昭憲皇太后がご視察になっています。

藤枝 そうですね。富岡製糸場は明治5年にできましたけれども、宮中のご養蚕は明治4年、1年早く始められているんですよね。渋沢栄一の親戚にあたる田島武平が御養蚕所の主任をやっています。富岡製糸場の創設にも渋沢が関係していますよね。

皇后陛下が、明治天皇と昭憲皇太后がとても教育にご熱心だったと、よくおっしゃっています。富岡製糸場も養蚕の発展の基礎というか、いろんな意味での教育の場になったのがよかったともおっしゃっていました。

 

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明治神宮と私
明治神宮と私

小田村 四郎(元拓殖大学総長)

明治天皇の御製は、小学校中学校でも教わりましたし、国民文化研究会では毎朝御製拝誦をしました。なんていっても数が多いですから。9万3千首。どれもすばらしい御製ばかりなのですけれども、日露戦争の「国のためうせにし人を思ふかなくれゆく秋の空をながめて」、すばらしい御製だと思います。日露戦争の37、8年に詠まれた御製の数が一番、多いですよね。それだけ大御心を悩ませられたと思います。

 

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小田村 四郎(おだむら・しろう)

大正12年、東京生まれ。昭和17年、東京帝国大学法学部政治学科に入学、同18年に学徒出陣、復員後は復学、卒業して大蔵省に入省。名古屋国税局長、内閣審議室長、防衛庁経理局長、行政管理庁事務次官、日本銀行監事などを経て、平成7年から同15年まで拓殖大学総長。現在、靖國神社総代、日本会議副会長、明成社社長、国民文化研究会名誉会長、國語問題協議會会長など務める。

聖蹟を歩く 第15回 明治11年北陸・東海道巡幸(9)
聖蹟を歩く 第15回 明治11年北陸・東海道巡幸(9)

金原明善と天竜川

11月1日、浜松の行在所を発った天皇は、天竜川の治水事業に力を尽くしていた治河協力社に立ち寄り、代表の金原明善(きんばらめいぜん)が謁(えつ)を賜りました。明善は洪水災害を防ぎ、地域住民の生活の安定ならびに産業の発展を願い、私財を投じて治水事業を始めました。

(中略)

平成23年(2011)、旧東海道沿いにある明善の生家が改修を終え、記念館「金原明善翁生家」として開館しました。関連の品々が陳列され、明善の功績は広く世に知られるようになりました。  昭憲皇太后は、明善が天竜川の治水事業に全力で取り組んでいることを聞き、「治民如治水(たみをおさむるはみずをおさむるがごとし)」の題で次の御歌を詠まれたといいます。記念館には、色紙に書かれた御歌が額装されて展示されています(写真)。

あさしとてせけばあふるる川水のこころや民の心なるらむ

 

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打越 孝明(うちこし・たかあき)

昭和35年、茨城県水戸市生まれ。早大大学院に学び、同大学助手や大倉精神文化研究所専任研究員などを経て、現在明治神宮国際神道文化研究所主任研究員および早大非常勤講師を務める。著書に『絵画と聖蹟でたどる明治天皇のご生涯』、共編著に『日本主義的学生思想運動資料集成Ⅰ・Ⅱ』や『大倉邦彦の『感想』―魂を刻んだ随想録―』、論文に「明治天皇崩御と御製 上・下」(『復刊明治聖徳記念学会紀要』25・26)などがある。