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【令和5年】

春号

 『代々木』は、明治神宮・明治神宮崇敬会が発行する季刊誌です。我が国の美しい伝統精神を未来に伝えるため、昭和35年より刊行をつづけております。明治神宮崇敬会の皆様にお送りしております。

 [明治神宮崇敬会のお申込み]

 

・ 「声の力」を考える 山根基世(元NHKアナウンサー)

            近衞忠大(宮中歌会始講師、クリエイティブ・ディレクター)

 

子どもの本という豊かな森 横川浩子(元講談社編集者)

 

・大礼服の取材にみる昭憲皇太后洋装化の意義と日本近代化の様相 吉原康和(元東京新聞編集委員)

・ 「声の力」を考える 山根基世(元NHKアナウンサー) 近衞忠大(宮中歌会始講師、クリエイティブ・ディレクター)
・ 「声の力」を考える 山根基世(元NHKアナウンサー) 近衞忠大(宮中歌会始講師、クリエイティブ・ディレクター)

 

山根 本来、歌の中には人間の、神への必死の祈りがこめられているはずである、と白川静さんの本にありました。本来の言葉というのは、切実な思いが籠っているものではないか。いま、現代人の言葉に、必死な、叫びのような、雄たけびのような思いのこもった言葉があるだろうか・・・と、そういう意味ではいま、言葉が薄っぺらくなって、膨大に流れている感じがありますね。

「言霊(ことだま)」といって、日本人は言葉に力を感じて、おろそかに使いませんでしたし、いまの子供たちみたいにすぐに「死ね」なんて、怖くて言えませんでした。もう一度、言葉の中にある言霊のようなもの、畏怖の念を思い出してほしいと思います。

 

近衞 神社の祝詞も、言葉というよりは神様とのコミュニケーションという意味があると思うんですけれども、歌会始でも、そういうものを感じることがあります。長くのばしたり、祝詞に近いんじゃないかな、と。

 

肚、腰、呼吸が大事

 

山根 本当に祈る時って、節がついたり、歌うような独特なリズムや調べが出てくる。日本語の大きな特徴で、思いをこめた時に調べが出てくるんですよね。そこが美しい。

 

近衞 口承伝承でマニュアルがないから、困ったもので・・・。

 

 

※記事抜粋です。『代々木』をお読みになりたい方は、[崇敬会にご入会下さい]

 

・子どもの本という豊かな森 横川浩子(元講談社編集者)
・子どもの本という豊かな森 横川浩子(元講談社編集者)

 

本をつくることは森をつくること

 

 森の歴史と営みを伝えるこの絵本は、作者松岡達英さんが「子どもたちが楽しく読み進められるように」と想いを込め、スダジイの老木と3羽のヤマガラとの会話に細密な絵を添えて構成されました。百年前の出来事が今この時を生きる読者に脈々とつながり、さらに百年先の未来へと視線が投じられます。

 子どもの本を作ることは、木を植えて森をつくることと通じるように感じます。出版したばかりの時は小さな一冊ですが、読んだ人の中に深く根を下ろし、やがて芽を出すことがある。芽吹かないかもしれないけれど、見えない根っこで支えることもある。自分には面白いと思えなかったり忘れてしまったり、という本もあるでしょう。その多様性こそが本の真髄でもあります。「木」という字に横一本を加えると・・・(略)

 

 

 

※記事抜粋です。『代々木』をお読みになりたい方は、[崇敬会にご入会下さい]

 

 

 

・大礼服の取材にみる昭憲皇太后洋装化の意義と日本近代化の様相 吉原康和(元東京新聞編集委員)
・大礼服の取材にみる昭憲皇太后洋装化の意義と日本近代化の様相 吉原康和(元東京新聞編集委員)

 

 私が美子皇后(はるここうごう=昭憲皇太后)の大礼服を初めて見たのは、令和2年(2020)9月です。取材先の修復作業現場で目にしたのは大礼服のトレーンの色鮮やかなバラ文様の生地の美しさでした。しかし、目を凝らしてよく見ると、経糸(たていと)がすり切れて欠失し、緯糸(よこいと)だけが残ってすだれ状になるなど、130年の歳月を経た明治の大礼服は、「満身創痍」のように見えました。

 こうした大礼服の傷みは、尼門跡寺院に関する研究と修復・保存に取り組む中世日本研究所(京都市上京区)のモニカ・ベーテ所長の調査で判明。皇后とゆかりの深い明治神宮と中世日本研究所、大聖寺、文化財保護・芸術研究助成財団などをメンバーとするプロジェクトチームが発足し、平成30年(2018)から大礼服の修復が進められています。

 プロジェクトは、大礼服のトレーンとボディス(上衣)の修復のほか、欠失しているスカートの復元も予定しています。そして、昭憲皇太后が逝去してから110年に当たる令和6年(2024)春に国内外の専門家による国際シンポジウムを開き、研究成果の発表とともに、修復した大礼服を披露する展覧会も計画されています。

 

 

 

※記事抜粋です。『代々木』をお読みになりたい方は、[崇敬会にご入会下さい]