愛犬「六号」と「花号」

明治天皇が動物の中で特に馬がお好きであったことは有名ですが、犬もことのほかかわいがられたようです。

伏見宮貞愛親王(ふしみのみやさだなるしんのう)がイギリスを訪れた際にお求めになった犬が5匹、天皇のところに贈られました。

天皇はそのうちの2匹を新宿御苑にお預けになり、1匹は有栖川宮家に、そして残った2匹をお手許で飼うことにされました。

この「六号」「花号」は、天皇崩御の後も昭憲皇太后のもとで愛育されたようです。

2匹とも利口な犬で、夜の9時には女官のもとに預けられるのですが、その時刻になると天皇に挨拶らしい振る舞いをみせてから部屋の方へ戻り、そして明朝には天皇のところに走り寄って嬉しそうに牛乳をいただきます。夕食のときも天皇のお膝元にいて、いろいろとご馳走をいただきました。

ときおりご飯を食べずに食事を与える係の者を困らせましたが、そんなときでも天皇が下さるものは必ず食べたといいます。

天皇のご不例が発表されますと、2匹の犬は侍医の忠告によっておそばから遠ざけられ、女官に預けられましたが、ある夜「六号」は天皇のお休みになっているお部屋の方を向いて異様な鳴き声をあげて吠えました。

この時こそ、天皇が崩御された時で、「六号には天皇がお亡くなりになることがわかったのであろう」と、側近の人々もいじらしく思ったといわれています。

 

                     

                       【明治天皇の愛犬「花号」を模したと伝わる毛植細工(明治神宮蔵)】

愛犬「六号」と「花号」