世界のなかの明治天皇
明治・大正時代の政治家で、英文通信社の社長として欧米各国に日本の事情を紹介することに努めた望月小太郎(もちづき こたろう)は、世界の人々が明治天皇にどのような印象を抱いたのかを国民に紹介したい一心から、二十余カ国の新聞雑誌を収集翻訳した大著『世界に於ける明治天皇』(大正2年)を刊行しました。
現在に比べれば万事不便な当時において、これほどの大事業をわずか1年足らずで成し遂げた望月の熱意と敏腕には、ただ敬服するばかりです。
その中から、アメリカの『ニューヨーク・タイムス』が明治天皇崩御の日(1912年7月30日)に掲載した記事を紹介します。
在世中に絶大な偉業を成し遂げられた明治天皇が、世界各国の君主の中で最も偉大なお一人であることは疑う余地がない。英国皇帝ジョージ王の永い王統も、日本皇室の起源と皇統に比べれば歴史の浅いものである。そして明治天皇はその皇統のなかで最もすぐれた君主であらせられ、じつに全国民の尊崇をお受けになるべきお方であった。
陛下は国内の動乱が頂点に達したときに皇位を継承され、ご在世中に国威を急速に拡張して、日本を世界の大国の一つにまで発展せられた。日清戦争に引き続き、ロシアに対して偉大にしてめざましい戦勝を博されたことは、何世紀にもわたって侮辱を受けてきたアジアの人々の心に、大きな勇気を与えたのである。もちろん陛下はこのような大業をお一人で成し遂げられた訳ではない。陛下は終始一貫して、信頼すべき国民とともに国難を乗り越えられたのである。
日本国中が明治天皇の崩御を哀悼申し上げるのはまことに同情に堪えない。世界各国は、新帝陛下が先帝のご遺志を継承して、益々国家の発展に努められんことを祈念してやまない。
【『世界に於ける明治天皇』(明治神宮蔵)】
